Lecture 13
1月14日
革命的雨水プロジェクト
村瀬誠
(雨水博士、墨田区役所勤務)
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1976年千葉大学薬学部大学院修士課程修了
1996年雨水利用の研究などで薬学博士の学位取得
2002年ロレックス賞準入賞受賞
現在、墨田区環境保全課環境啓発主査として区の雨水利用の推進事業に関わるかたわら、雨水利用を進める全国市民の会事務局長、国際雨水資源化学会都市担当問題理事を務める。
94’雨水利用東京国際会議実行委員会事務局長。東邦大学薬学部非常勤講師
主な著書に『環境シグナル』、『やってみよう雨水利用』(いずれも北斗出版)、『都市の水循環』(NHKブックス)など多数。
流せば洪水 溜めれば資源
雨水博士・村瀬先生の主張はこの一言につきる。ところが、これは言うほど簡単ではない。既に、都市の構造は自然界におけるような循環型とはかけ離れてしまった。
東京の場合、1500ミリ降った雨の内、地下にしみ込むのはわずか300ミリ、バランスは全く取れていない。コンクリートとアスファルトに覆われ、雨水がしみ込む地面が無いのだ。残りは下水道にいく。下水道の容量を越える豪雨になれば、あっという間に下水は溢れ、マンホールが飛び、道路は川と化し、洪水に見舞われることになる。
1999年、都内で、130ミリを越える豪雨のため地下室に浸水、男性が死亡した事件は記憶に新しい。その一ヵ月前に同じ事件が福岡で起きたばかりだった。都市の脆弱な構造に加え、瞬時に激しい雨が降る熱帯的な降雨に、環境からの警告を読み取らずにはいられない。
では、どうすればいいのか。
ここに雨水博士の「革命的雨水プロジェクト」が始まった。発想の転換である。東京の年間降雨量は25億トン、一方、年間の水消費量は20億トンだ。降った雨を利用できれば、治水も利水も一石二鳥ではないか。さらに都市防災にも役立つとなれば、一石三鳥にもなる。
先ずは国技館への働きかけから始めたという。あの大屋根に降った雨を受けて溜めれば1000トン、トイレも冷房も賄える。交渉は難航したが、雨水博士の熱意が実った。設計変更、施工へ。これが雨水利用施設の第1号となった。次いで、隣接する江戸東京博物館、福岡ドームなど全国へと広がって、今では数千の施設が雨水利用を実現している。
ここで安心して止めてしまわないのが、博士の雨水博士たる所以だろう。今度は、大規模施設だけではなく、下町の木造住宅密集地域での街づくりに応用した。周囲に降った雨を集めて貯水し、手押しポンプで汲み上げる「路地尊」を作ったのだ。
この信念と実行力。ユーモア溢れる口調から覗く、不断の向上心。お話しをうかがっていてつくづく、一人でも世の中を変えることができるのだと実感した。
雨水博士の活動は留まるところを知らない。ボツワナへペルーへバングラへ。台湾では世界初の雨水利用動物園まで作ってしまった。
現在、安全な飲料水を確保できない人口は10億と言われる。8億は飢餓で死線を彷徨っている。そんな世界に向ける博士の視線の優しさが琴線に触れる。
講義をしめくくるメッセージは
No more tanks for war, tanks for peace!
だった。
(宮 崎 緑)